■■<小ネジの種類と強度区分>■■S-009
ホーム設計製図資料 2008-4-20記述
■設計者にネジの種類を選択した理由を聞くとがっかりすることがある。ネジ選択の基本的なポイントは、その締結力にあるのだが、多くの設計者は、普通の十字ドライバが入らないので、短かな六角レンチで止めることができる六角穴付きボルトにしたり、さらに狭いのでスパナで回す六角ボルトを使ったりする。平座金をはめるスペースがないので座金なしにしてしまう。ある程度の量産では、スパナでネジを締める設計など許されないし、何よりネジの種類や締結ツールによって、ネジの強度や、締付けトルクが大きく変わってしまうという問題の大きさに気がついて欲しい。そういう自分も、まあ同じようなことをやってきた訳であるのだが…。スタビ・ドライバと言ってニギリが太く、全長の短いドライバがあるが、さらにこれのニギリをカットした短小ドライバで、なべ小ネジを締めさせていた。このようなネジは、締めにくいので、当然緩み事故の原因となる。

■分かったようなことを言えないのは、会社を辞めて、他の会社と技術打ち合わせする時に、ネジの呼び方略称が相手側に通じないのである。私たちはずっと、例えば「PAN」「ZPAN」「BID」「CAP」「HEX」「TPHEX」「SET」等々とネジを呼んでいた。協力会社の人達も覚えてくれているので、それが普通だと思っていたが、世の中では通らないらしい。ネジ屋さん業界も統一的呼称がないようだ。インターネットの通販のネジのリストを見ても、JISの日本語呼称をそのまま使っている例が多いし、強度区分の指定など記述がない。「JISハンドブック<7>機械要素」を参照して、小ネジの種類と強度区分を整理しておく。
「ネジ規格・用語」http://scr.jisw.com/も参照した。以下では鋼製ネジだけに限定する。ステンレスや他材質は別の規格によっている。

JIS B 1051炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質
--第1部:ボルト、ねじ及び植込みボルト
JIS強度区分 JIS指定材料及び熱処理 降伏応力
(0.2%耐力)
[N/mm2]
あくまでも(相当)事例
ネジの種類 材質例 精度 適用規格
3.6 炭素鋼(熱処理なし)
180
4.6 240
4.8 320 十字穴付きなべ小ねじ SWCH 6g JIS B 1111
5.6 360 300 六角ボルト SWCH 6g JIS B 1180
5.8 400
6.8 480 十字穴付きタッピンねじ SWCH
8.8 添加物入り炭素鋼(焼入焼戻)
炭素鋼(焼入焼戻)
640
9.8 添加物入り炭素鋼(焼入焼戻)
炭素鋼(焼入焼戻)
720
10.9 添加物入り炭素鋼(焼入焼戻) 900
10.9 炭素鋼(焼入焼戻)
添加物入り炭素鋼(焼入焼戻)
合金鋼(焼入焼戻)
900 六角穴付きボルト SMC
焼入焼戻
6g
12.9 合金鋼(焼入焼戻) 1080 六角穴付きボルト アンブラコ
■強度区分:「最初の数字」…呼び引張強さ(N/mm2)の1/100の値。
         「2番目の数字」…呼び下降伏点(又は0.2%耐力)と呼び引張り強さとの比の10倍の値。
         この二つの値の積を10倍すると呼び下降伏点(N/mm2)になる。


JIS B 1052鋼製ナットの機械的性質
ナット
強度区分
組み合せるボルト あくまでも(相当)事例
ボルトの強度区分 ネジサイズ ネジの種類 材質例 精度 適用規格
[3.6] [4.6] [4.8] 〜M14
[3.6] [4.6] [4.8] 〜M16 六角ナットスタイル1 SWCH 6H JIS B 1181
[5.6] [5.8] 〜M39
[6.8] 〜M39
[8.8] 〜M39
[9.8] 〜M16
10 [10.9] 〜M39
12 [12.9] 〜M39 FLEXLOCゆるみ止めナット アンブラコ
■強度区分:呼び高さが[0.8×ネジ外形]以上のナットに適用される。
         ナットの強度は、相手のボルトを降伏点ギリギリに締めても、ナットが耐えられる強度
         として定義される。

■JISによれば、各種ネジはその強度区分は限定されず、幅広く設定されている場合が多い。しかし、インターネット通販を見ても、強度区分でネジを選ぶようになってはいない。形と材質で選ぶしかない。こんなとき、一般的なネジの強度区分を意識しておけば、大きな失敗はしない。それを事例として示したが、あくまでも私が常識と思う事例であり、他業界の技術者の常識とは違うだろう。
 小型の装置で汎用的に使用される小ネジは、だいたい320N/mm2が耐力となる。タッピンねじは、板にネジ切りするために、さらに強くなり、金型や産業機械で多用される六角穴付きボルトは、普通のナベ小ねじの3倍程度の耐力を持つ。

■ボルトとナットの組合せ、ボルトと他部品のタップめねじと組合わせでは、締め付けによる破断は、ボルト側で発生することが好ましい。要するに、ボルトよりナット側の強度を大きくするように指示しているのが、下表のナットの強度区分である。普通の設計ではナットの使用は避けるが、相手部材の材質とタップ深さは、実はこのナットの強度区分を参照すべきなのである。特に六角穴付きボルトは、高強度であり、締付けトルクも大きくとられるので、注意を要する。
 




Copyright MechatroIdea 2007