| ■■<鋼板・その強さと剛さ>■■S-026 | |
| ホーム>設計製図資料> | 2008-4-10記述 | |
最近のAsahi.comの配信によれば… JFEスチールが開発した自動車用鋼板「NANOハイテン」が、社団法人発明協会から、07年度の21世紀発明奨励賞を受けた。鉄にチタンなどの元素を加えて合金化する際、分子の並び方を従来の10分の1の3ナノメートルの水準まで制御し、強さと加工しやすさを両立させた。従来品より板を薄くできるため、車の燃費向上に貢献する。…とある。その引張強さは 590〜980MPaである。 ■古典的で、技術より設備集約や寡占による事業展開の方が話題になることの多い鉄鋼材料の世界であるが、これは大きな技術革新だと思う。 ハイテンとは「高張力鋼」である。JISでは、自動車用の熱間の「SPFH」、冷間の「SPFC」が規定されている。 「SPFH」 : 引張強さ 490N/mm2〜590N/mm2 「SPFC」 : 引張強さ 340N/mm2〜980N/mm2 ただし、高張力の品番には薄板がない。 ちなみに、我々が多用する鉄鋼材料の引張強度も、復習のために上げておこう。 「SPCC」 : 引張強さ 270N/mm2〜590N/mm2 ただし、JISでは参考値。 「SWP−A」 : 引張強さ 2060N/mm2〜2260N/mm2 (線径1mmの場合) ■こうして見ると、圧延板と、棒や線とでは、引張強さが大きく違うことが分かる。板でハイテンションといっても、棒や線では、取り立てて高張力というオーダではない。また、NANOハイテンの方が、従来のハイテン鋼板より高強度でもない。板は、プレス成型して使われるので、圧延性が良くて、かつ引張強さを高める材料開発が技術革新のポイントである。 NANOハイテン http://www.jfe-steel.co.jp/products/car/products/sheets/nanohiten/index.html のホームページを読むと、単に引張強さの高さを誇っているのではなく、強さのばらつきが少ないこと、バーリングのような穴広げ性が高いことが売りになっている。たしかに590〜980N/mm2と、カタログ・スペックでは、さして高張力ではない。 ■鉄鋼の強度は、不純物を減らし、結晶を均一に制御することで、飛躍的に改善されると考えられている。 トロイダル式CVTにおいては、トラクション力を伝達するトロイダル面の面圧強度を上げることが、最大の技術課題であったが、これも材料制御によってブレークスルーした。このNANOハイテンも、新しい鉄鋼材料の先端例として興味深い。 ■ちなみに「強さ」の概念について述べる。先の記事に戻って、「従来品より板を薄くできるため…」という記述を勘違いする人はいないだろうか。うっかりと読むと、「従来1mm厚さが必要だった板を、そのままの形状で0.8mmに減らせる」と読んでしまう。 ときどき、筐体などの設計で「強度不足」というような表現をする。しかし「強度不足」だからといって、その材料を「SPCC」から高張力鋼に変えても期待した強度は得られない。「強度」といっているのは、多くは変形のしにくさ「剛性」である場合が多いからである。剛性は弾性係数と断面係数で決まる。 「強さ」と「剛さ」の違いに気をつけよう。「弱い」に対応するのが、「強い」、「柔らかい」に対応するのが「剛い」である。「硬い」と言ってもいいのだが、表面硬さと勘違いするので使わない。 ■NANOハイテンを使うと「従来品より板を薄くできる」というのは、圧延性がよいので、断面係数を大きくするプレス加工ができるので、薄板でも「剛性」が確保できるのである。 |
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